まめ知識

 不動産に関する身近な出来事を鑑定士目線でお伝えします
知っていると得をする「まめ知識」を少しずつですがご紹介いたしますので、
気楽な気持ちで読み流してください~

その1 建蔽率について

 建蔽率は、居住者の安全を確保する目的で、敷地面積に対する建築面積の割合を規定しています
用途地域毎に60%、80%などと指定されていますが、以下のa、bのような場合、+10%の緩和を受けられる建蔽率加算
が認められるケースがあります

 a .角地、二方路地(2つの道路の間にある敷地)または 多方路地
 b. a に該当しない 場合

 a.はご存じの方もあるかもしれませんが、敷地周囲の延長の一定割合がそれらの道路に接していること等の一定要件を満たせば、
   建蔽率が+10%加算されます
   角地は道路が多いため、より安全と見なされます

 b.において、一方の道路にしか接面していない中間画地の場合でも、
  「公園、広場、川、海、軌道敷地等に接する敷地で 角敷地に準ずるもの」であれば建蔽率緩和を加算できます
 
図1のように、公園が隣接するケースについては、公園を角敷地に準ずるものとみなして建蔽率を加算できます
 
「角敷地」 とは、「多方路地」とも置き換え可能であり、図2のような場合は、川を道路とみなし、多方路地に準ずるもの として
建蔽率を+10%加算できます

鑑定士🔍目線

 角地・二方路地や、上記角地等に準ずる画地は中間画地に対して建蔽率の緩和がある分だけ価値が高く、
「 建築基準法」においては鑑定評価額もその分高くなります ですが上記のような例であったとしても、環境面など多方面から考慮すると
必ずしも評価額が高くなるという訳ではありません その辺りを総合的に判断して、適正価格を求めるのが不動産鑑定士の役目なのです!

 ※今回の建蔽率緩和のケースは、神戸市内における建築基準法施行細則第12号各号の規定に基づいております
   他の市町村においては、条例等により一部扱いが異なるケースもございますので注意下さい

その2 相続と不動産鑑定評価


相続は誰にとっても身近な問題です そのとき不動産鑑定士による鑑定評価書が役立つケースをご紹介します

相続人の間で財産を公平に分割する

 不動産の価値を正確に把握することが必要です
   そのための資料として不動産鑑定士が作成する鑑定評価書は極めて有効であり、土地をどのように分割・配分すれば市場価値が
   均等になるかなど、価格の専門家である不動産鑑定士がアドバイスいたします

不動産の時価査定で節税する 

相続の際、鑑定評価書は必須ではありません
    税務署が不動産について納めるべき相続税額を求めるとき、一般に道路に設定された㎡あたりの路線価(毎年7月1日に国税庁が発表)
    に応じて画一的に算出されているので、相続対象となる不動産(土地)が標準的である場合は鑑定評価がなくても問題ありません
     ですが以下のような土地の場合、鑑定を取ることにより かなりの節税効果が得られる場合があります
 ◇極めて不整形
  ◇道路と敷地が極端に高く 又は低く接している
  ◇周辺の一般的な敷地規模に対して極端に大きい 又は小さい

  以上のような極めて特殊な土地の場合、不動産鑑定評価額を時価とすることが、税務署の算出よりも納税にゆうりとなることがあります
 相続財産の評価は、相続があった時における「時価」とされているので、路線価による価格と鑑定評価額を比べ、納税に有利となる選択を
おすすめいたします

鑑定士🔍目線

 不動産は相続時における重要な財産である一方、非常に個別性が強く、一見しただけでは その価値の把握できません
 納税者有利の鑑定評価を導き出すためには、専門家の知識が必要です

その3 地主が借地権を買い取るとき


 関西の住宅地の借地権割合は慣行的に 50% (更地に対する借地権の割合)程度が一般的とされています

    ※相続税路線価における 借地権割合は、課税目的のため 住宅地では60%の指定が多いですが、実際に借地権を返還する時の
       更地価格に対する割合を定めたものではありません(参考にはされますが)

  借地人が 個人 の場合

 借地人・地主の公平性から考えても、「借地権の割合(価格)は半々にしましょう」とする50%の 割合が極めて合理的であり、
過去の例に見ても取引が成立し易い割合といえます

  借地人が 法人 の場合

 関西において地主は、個人借地人に寛容なのに対し法人借地人には 地主権利意識が強く強硬的です
特に 借地人が大企業である場合、この傾向が顕著であるようで 経済的強者に対する強気な態度として、地主有利な交渉にて決着することが 多いようです。
 借地権については結局のところ、契約当事者間による話し合いとなりますが、それでも路線価ないしは更地時価の 20%を割る例は
ほとんど見受けられず、結果として大手法人が借地権を地主に返還する場合の対価(借地権価格) は更地価格の20~30%程度で
決着するケースが多いようです
  【参考】
      平成15年ごろ、豊中市内住宅地、大手法人借地人が借地権の返還対価として、更地約71百万円に対して、
       15.5百万円(更地に対する割合約22%)で決着している

鑑定士🔍目線

 借地権は、賃料の借り得部分に着目した 契約の個別性や 地域の借地意識により、その価格は大きく左右されます
契約内容を精査する目👀、地域性を熟慮した地元の不動産鑑定士ならではの目👀 が役に立つと思います

その4 地下に潜む 土地

 一見したところ、平らな整形地で何も問題無さそうな土地でも、実はその価値を大きく下げる要因が 地下に潜んでいる
ことがあります。
 ここでは、ぱっと見ただけではわからない、土地の減価要因を紹介します

従前建築の基礎杭(危険度:☆☆)

 古くなった建物の解体費用を抑えるため、地上建物および地表杭のみを取りて壊して 更地としている ケースが見受けられます
図のように、地下の基礎杭はそのまま放置されているので、いざ建物を建築しようとする場合に残留した杭を 撤去しなければなりません
 撤去費用は…直径幅30cmの杭1本につき約15,000円/m・本
       仮に地下に長さ約10mの杭が30本残っているとすると…
                15,000円×30本×10m=4,500,000円程度が追加で必要となります

地下に埋められたアース棒(危険度:☆)

 基礎杭と同じく、アース棒(銅製・直径幅約五cm、長さ2m)も地下に残っている可能性があります

この場合の撤去費用としては…
ユンボ・工夫人件費、産業廃棄物処理費用等を考慮して、
                  約40,000円~50,000円/本が追加費用となります!

地下施設(危険度:☆☆☆)

 古くからのビジネス街においては、昔使っていたビルの地下部分が取壊されない状態で残っているケースがあります

 地上で時間貸し駐車場等として使用されているため、一見して実態は把握できません
新築の際には 地下施設の解体・処分費用(要解体敷地面積あたり最低坪30,000円~)が別途必要となるほか、余計な時間もかかります
       

特に商業地域における更地は注意が必要です


周知の埋蔵文化財包蔵地(危険度☆~☆☆☆)

 埋蔵文化財の存在が分かっている土地(周知の埋蔵文化財包蔵地)の土木工事を行う場合は、 文化財保護法による届出が必要です

その内容によっては試掘を行い、試掘の結果によっては正式な本発掘調査となる場合があります。
自治体により扱いは異なりますが、試掘費用は公費負担、正式な発掘調査の費用は原則として事業主負担 というのが一般的です

 発掘に必要な費用(調査担当者の人件費、工事に必要な機材費用、行為に伴い発生した諸経費等)は…
    遺跡の広さ・深さにより調査費用は大きく上下しますが、大体一月に300~500㎡掘れるとして
         

発掘面積が1,000㎡の場合で 平均約3~5万円/㎡の発掘調査費が事業主に必要となります!

 周知の埋蔵文化財包蔵地に入っていることは必ずしも減価にはなりませんが、思わぬ支出を被らない為にも 埋蔵文化財区域該当の有無以外に
    「遺跡の層の深さ」
    「過去における試掘・発掘の履歴」(既に調査が終わっている土地は新たに発掘の必要が無く、費用も発生しないため)
    「文化財発掘の可能性」
についての調査も併せてされておくと良いでしょう。

土壌汚染(危険度☆☆☆~)

 従前建物の用途が有害物質を使用する工場や作業所の場合には土壌が汚染されている可能性があるので注意が必要です

土壌汚染が確認される土地はそのままでは使えないこともあり、更地価格からその除去又は洗浄に必要な費用を 控除した額が適正な市場価格とな


 汚染の除去費用については、土壌の洗浄・入れ替え等処理方法により大きく変動しますが、その金額は概して莫大になることが多く、
除去費用が土地の価値を上回るようなケースも存在しますので、特に注意が必要となります。
 対象地に土壌汚染が無いかどうかの確認は、図書館で過去の住宅地図(昭和30年頃以降の地図ですとすぐに閲覧・コピーが可能です)を見て 過去に工場が建っていないかを確認することが簡単です。

その他には、
   「土壌汚染対策法による指定区域」に指定されていないか?
   「水質汚濁防止法及び下水道法上の特定施設」の届出が出ているか?
   もし届出が出ている場合は「有害物質の使用届出」が出ているか?
届出が出されていない場合には事業所廃止時の土壌調査は必要ありませんし、 汚染の可能性も低いと判断してよいでしょう

鑑定士🔍目線

 市場価格よりも安い!と思って飛びつくと地下に思わぬものが埋まっている可能性があります
 適正価格だと思っていても、地下に隠れた減価要因のために、高い買い物をしてしまっている場合があります

 上記のことは、意外にも簡単に調べることができるので、土地を購入する際にお役立てください

その5 中古住宅の鑑定評価

 築年が経過した住宅(一般的には築後約25年以上)は不動産業者に言わせると価値ゼロとなることが多いですが
現状で居住が可能な建物や管理状態が良いもの建物は、不動産鑑定評価において その価値を認めてもよいと考えます
ただし、建築基準法施行令の改正(1981.6.1)の前と後では大きく異なります
   ※ここでの年月日は建築確認を受けた年月日です
 建物登記簿上の新築年月日の記載が 1981年6月以降であっても、新耐震基準による建物とはなりませんので注意が必要です

震災発生時における倒壊の危険性

 ★旧 耐震基準による建物★
    現行建築基準法に比べ、耐震性に関する規定がかなり緩い
    震度5~6クラスの大震災で倒壊する可能性があり、災害時に居住の安全性確保ができないため、
    内装状態が良く、居住が充分に可能であっても、建物としては致命的な欠陥があると判断され、
    売買価格及び鑑定評価においてもほぼ残価若しくはゼロ評価になると思われます。

 ☆新 耐震基準による建物☆
    規定では「震度6程度の地震でも倒壊しない強度が施されている建物等」
    一生に一度起こるか起こらないかという超巨大地震を除いて、ほぼ地震による倒壊の危険性は無いもの考える
    長期的に建物が利用可能となり、その分市場価値が発生します。

融資における担保の適格性

 ★旧 耐震基準による建物★
    担保不適格として、住宅支援機構公庫融資(フラット35)や、民間住宅ローンの審査が通らない可能性があります
    住宅ローンが利用できない物件は、現金で購入しなければならず、流通性を阻害され その評価は下がります

 ☆新 耐震基準による建物☆
    公的および民間住宅ローンの対象になりやすく、担保価値や市場性に優れた物件と判断されます

鑑定士🔍目線

 通常、建築確認を受けた後に建物の建築工事が行われ、完成(完了検査)の後に建物登記をします
登記簿上の新築年月日が 1981年6月以降であっても、建築確認はそれ以前であるため、新耐震基準の建物とは、認められないのです
 耐震基準の新旧は、建物の評価を大きく左右するものですので、正確な建築確認年月日を調査しておくことをおすすめします

その6 旧耐震基準の住宅に関するまめ知識

 1981年6月1日以前の 旧耐震基準による建物であっても、住宅ローン控除を受けられる可能性があります

「耐震基準適合証明書」または「住宅性能評価書の写し」

 住宅支援機構によると、建物の購入前に、建築士が発行する「耐震基準適合証明書」または「住宅性能評価書の写し」 があれば
機構が独自に定める「耐震評価基準」に適合していると判断し、フラット35の利用を認めることができるそうです
耐震基準適合証明が取得できる居宅であるなら、各種税制上の優遇措置を受けられ、建物の評価価値が上がります
ただし、旧耐震基準の建物を診断した建築士の話では…
約80~90%建物は耐震基準に適合せず、補強工事なしでは耐震基準適合証明書を取得することは難しいそうです

鑑定士🔍目線

 証明書の発行費用は、建築事務所によって異なりますが、だいたい20万円程度
建築確認時の図面や筋違い等の位置が記載された設計図(構造計算書)があれば、~5万円程度の簡易な診断で発行可能だそうです

 古い住宅の評価や売買に当たっての参考になれば幸いです